こんにちは。私は大学院生で、夏休みを利用し、2017年8月初旬にイギリスのブライトンで行われた『ブライトン・プライド』を見物に行きました。ブライトンはイングランド南東部の海沿いにある都市で、ロンドンから電車やバスで約1時間の所にあります。以前滞在した時に「LGBTのコミュニティがある」「毎年夏のゲイパレードがとても賑やかで楽しい」街だと知り、再訪したいと思っていました。今回実現できたのでご紹介させていただきます。
ブライトンの「プライド」は、1973年にパレードという形で最初に行われてからもう40年以上の歴史があります。近年は財政的な問題などで開催が危ぶまれたこともあったようですが、イギリスで一番大きいパレードと謳い、今年も無事に開催されました。
『ブライトン・プライド』は様々なイベントの総称で、いわば『東京レインボープライド』の「レインボーウィーク」にあたります。パレードの正式名称は「The Brighton Pride LGBT Community Parade」と言います。パレードは海岸沿いからスタートして中心街を通ってフェスティバル会場の「Preston Park」まで歩きます。この他のイベントに、「プライド・フェスティバル(以後フェスティバル)」や「プライド・ヴィレッジ・パーティー(以後PVP)」「トレジャー・ガーデン」「プライド・ドックショー」などのイベントが行われました(他にも「ヴィクトリアガーデン」「プライドキャンプサイト」などといったイベントスペースもありました)。
8月5日、土曜日の早朝、ロンドンのヒースロー空港に到着し、バスで一路ブライトンへ向かいました。外は小雨が降ったり晴れ間が出てきたりと、イギリスらしい天候。しかしブライトンは快晴でパレード日和でした。私がブライトンに着いたのはパレード開始の午前11時直前で、沿道はすでにたくさんの見物客で溢れかえっていました。レジャーシートを広げている人や、パブで一杯飲んでいる人、あるいは仮装している人など、みんな思い思いの場所で今や遅しと待機していて、その姿を見ているだけで楽しそうです。私は予約していたフェスティバルチケットをボックスオフィスにてリストバンド(入場券代わり)に交換してもらいました。
私は街のシンボルの時計台(Jubilee Clock Tower)近く、ノースストリートに陣取りました。実際には観られなかったのですが、スタート地点ではイギリス陸軍のパラシュートチームが上空からレインボーフラッグを持って舞い降り、それを合図に、パレードが始まったようです。ブライトンパレードは道路と歩道の間に柵がなく、臨場感があって、とてもアットホームな雰囲気だなと思いました。
しばらくすると、パレードの隊列がやってきました。以前に見学したシドニーのマルディグラでは「Bikes on Dykes」が最初に駆け抜けましたが、ブライトンでは観られませんでした。ブライトンのパレードを一言でいうと、なんでもありで、緩くてハッピーな雰囲気でした。ベビーカーを押して歩く人がいるかと思うと、「私は94歳の最長老」と標榜するおじいちゃんが電動車椅子で悠々と行進していて、それを見た沿道の人々が大歓声を送りっている。何とも言えないハッピーな気持ちになります。
2階建てバスやトラックなどのフロートを先頭に練り歩く企業や団体のチームもあれば、大きなフラッグやプラカードだけを持って行進するチームもありました。全員でダンスや演奏をしながら歩くチーム、はたまたドラァグクイーンが単独で歩いていたり、いろいろな人が思い思いにパレードを楽しんでいました。どんな存在であっても多様性の一つだと、難民やホームレスの問題を提起するチームもあり、お祭りでありながら社会運動でもあるのだなと思いました。これはまさに今年のブライトン・プライドのロゴマークにある「Summer of Love」という合言葉を体現していて、全てをハッピーな気分で楽しんでしまうものでした。この気分を持ち上げるかのごとく、街中にはいたるところにレインボーフラッグが掲げられていました。また、「アメリカン・エクスプレス」はブライトンじゅうの加盟店に、今回のプライドに向けて準備したという専用ステッカーを貼っていました。
さて、最後のフロートが通り過ぎた後、パレードを追いかけるようにして、フェスティバル会場へ向かいました。面積が63エーカーの公園で、東京の代々木公園の約半分くらいのスペースを丸ごと使っていました。中にはステージや物販エリアだけでなく、様々なダンステント(ゲイ向けやレズビアン向けあるいはトランス向けなど複数)、家族連れ向けエリア、移動遊園地とは思えないくらい充実したファンフェアーエリアなどがありました。そこではみんな、芝生の上で思い思いにくつろいでいました。
その夜、メインステージでは「ペットショップボーイズ」が出演し、「Go West」をはじめ熱いライブパフォーマンスでプライドの最後を盛り上げてくれました。
23時頃にフェスティバルは終わり、長旅の疲れもあって、私はホテルに帰り、速攻で眠りにつきましたが、ホテルのあるPVPエリアでは、夜中じゅう大盛り上がりだったようで、翌朝、目覚めた時もまだ、余韻覚めやらぬようで、外は大騒ぎをしていました。こうして、私のブライトン・パレードの1日が終わりました。
プライド主催者のニュースレターによると、警察や行政機関の推定値で約40万人がプライドの週末期間にブライトンに集まり、そのうちパレードを行進した人や見物した人は、合わせて約30万人だったということです。ブライトンは人口が281,076人(Wikipediaより;2014年)ですから、当日はかなり多くの人々が市内外からブライトンに集まったことになります。
ブライトンの街に佇むと、ゆったりした気持ちになります。ロンドンと比べるとその差は歴然で、そこがブライトンの魅力だと思っています。
ブライトン・パレードは毎年8月第1土曜日開催なので、日本からの参加はなかなか難しいかもしれませんが、たとえパレード期間でなくてもブライトン自体がとても魅力的な街で、LGBTにとっても住みやすい街なので、興味を持たれた方にはぜひ一度訪れてみていただきたいものです。
取材・文/梅川義也
■ブライトン・パレード2017
日時:8月5日(土)
公式ウェブ:https://www.brighton-pride.org/
●関連動画
パレード行進:https://www.youtube.com/watch?v=dpsDqtalvHw
Pet Shop Boys:https://www.youtube.com/watch?v=zgab5kfgHtI